男性更年期障害について
更年期障害は女性だけの症状と思われがちですが、男性にもみられ、LOW症候群(加齢男性性腺機能低下症候群)とも言われ、潜在患者は約600万人もあるそうです。男性更年期障害は加齢に伴う男性ホルモン(テストステロン)の低下により様々な症状を引き起こします。女性では閉経前後の40-50歳代に好発するのに対して、男性では30歳代後半から幅広い年齢層に発症し、なかには70-80歳代になって症状が現れる人もいらっしゃいます。
男性更年期障害の症状
(1)身体症状
①骨、関節、筋肉痛
②発汗、ほてり
③睡眠障害
④記憶、集中力の低下
(2)精神、心理症状
①落胆、抑うつ、いらだち、不安など
(3)性機能関連症状
①性欲低下
②勃起障害(ED)
男性ホルモン(テストステロン)は20歳代をピークに、以後、年齢を重ねるごとに低下していきます。ただし、下がり方には人それぞれで、テストステロンの数値も個人差があります。また、必ずしもテストステロンの数値と症状の程度は相関せず、同じ数値でも症状の出る人と出ない人がいらっしゃいます。
男性ホルモン(遊離型テストステロン)の平均値
20歳代 | 30歳代 | 40歳代 | 50歳代 | 60歳代 | 70歳代 | |
平均値 (pg/ml) |
16.8 | 14.3 | 13.7 | 12.0 | 10.3 | 8.5 |
年代 | 平均値 (pg/ml) |
---|---|
20歳代 | 16.8 |
30歳代 | 14.3 |
40歳代 | 13.7 |
50歳代 | 12.0 |
60歳代 | 10.3 |
70歳代 | 8.5 |
一般的には、遊離型テストステロン値が11.8 pg/ml以上であれば正常、11.8~8.5 pg/mlであれば要注意(ボーダーライン)、8.5pg/ml以下の場合は明らかに低いとされ、ホルモン補充療法の適応となります。ただし、ボーダーラインの方でも、症状の程度に応じてホルモン補充療法をおこなう場合もあります。
検査
●問診:
病歴の問診および男性更年期障害に関する問診票を記入してもらいます。また、排尿障害や勃起不全についての問診票についても記入してもらう場合もあります。
●血液検査:
血液生化学および遊離型テストステロンを含む内分泌項目、また、前立腺がんを除外するため、PSA値を測定します。
●超音波検査:
残尿測定や前立腺肥大症の有無を調べます。
●その他:
検尿、直腸診など
治療
- ①男性ホルモン補充療法
- 遊離型テストステロン値が8.5pg/ml未満の場合、男性ホルモン補充療法を第1選択におこないます。8.5~11.8pg/mlの方でも、その他の治療が効果がなければホルモン補充療法を試みます。一般的には男性ホルモンの注射を2週~4週おきに筋肉注射をおこない、症状をみながら増減します。ただし、下記にあてはまる場合は、病状を悪化させる可能性があるため、男性ホルモン補充療法はおこなえません。
- (男性ホルモン補充療法の除外基準)
- ・前立腺がん
- ・治療前PSAが2.0ng/ml以上
(ただし、2.0~4.0ng/mlの場合は慎重に検討し治療する)- ・中等度以上の前立腺肥大症
- ・乳がん
- ・多血症
- ・重度の肝機能障害
- ・重度の腎機能不全
- ・うっ血性心不全
- ・重度の高血圧
- ・夜間睡眠時無呼吸
- ②漢方薬
- 男性ホルモン値がさほど低くない場合や男性ホルモン補充療法が行えない場合は、ほてりやイライラ、気分の落ち込みなど症状に応じて漢方薬を処方します。
- ③その他
- 勃起不全(ED)がある場合は、ED治療薬、不眠症には睡眠薬、うつ症状に対しては抗うつ薬など考慮します。