尿漏れ、失禁がある
(トイレに間に合わない、咳やくしゃみ、立ち上がると漏れる)
尿失禁の頻度は年齢とともに増加し、60歳以上の人のうち、男性では10%、女性では24%以上の人が尿失禁に悩んでいるとされていますが、そのうち、治療を受けている人は1割にも満たないと言われています。
【尿失禁のタイプ】
①腹圧性尿失禁
咳、くしゃみをしたり、重いものを持ったり、立ちあがったときなど、おなかに力が入ったときに尿が漏れる状態です。尿道を締める筋肉の衰えが原因です。
②切迫性尿失禁
急に尿意を感じ(尿意切迫感)、我慢できずに漏れてしまう状態です。冷たい水を使ったときや、水の音を聞いたときに尿意を感じる時もあります。乗り物に乗っているときに尿意を感じたり、トイレの場所を気にしなければならないことから、外出や旅行を控えてしまう方が多くみられます。脳血管障害や前立腺肥大症など、原因が明らかな場合もありますが、多くの場合はっきりしたメカニズムはわかっていません。
③溢流性(いつりゅうせい)尿失禁
元々、排尿障害が前提として存在し、尿が出にくいため、ぱんぱんに膨らんだ膀胱からたまりすぎた尿があふれ出てくる状態です。一見排尿できているように見えても、ちゃんと出しきれていません。代表的な疾患は前立腺肥大症で、男性に多くみられます。
④機能性尿失禁
膀胱機能は正常にもかかわらず、認知症や身体運動機能の低下が原因でおこる尿失禁です。歩行障害のため、トイレに着くまでに時間がかかったり、ズボンを下げるのに時間がかかるため間に合わないとか、認知症のため、トイレがわからないなどです。
【検査】
問診:
尿失禁の状況を確認します。
尿検査:
尿路感染の有無を調べます。
超音波検査:
残尿や、前立腺肥大症(男性の場合)、膀胱腫瘍、膀胱結石の有無など調べます。
必要があれば行う検査
尿流量測定:
測定機器のついた便器に排尿してもらうことにより、尿の勢い排尿量、排尿時間を調べます。
排尿記録:
排尿時間、排尿量、尿失禁の有無を記録し、失禁のタイプを診断します。
パッドテスト:
パッドをつけて実際の失禁量を測定します。
【治療】
①腹圧性尿失禁
軽症であれば、骨盤底筋体操と薬物療法が試みられます。骨盤底筋体操は尿道、膣、肛門周囲の筋肉を収縮させたり緩めたりする練習を1日数回継続しておこなうことで、骨盤底筋を鍛え、失禁を改善する方法です。 薬物療法は、尿道を収縮させるβ受容体刺激薬や、膀胱平滑筋を緩める抗コリン薬を使用するときもあります。重症では、手術適応となり、尿道をメッシュ状のテープで支える手術がおこなわれます。
②切迫性尿失禁
薬物療法が中心となり、抗コリン薬で膀胱の収縮を抑制することにより尿失禁の改善をはかります。副作用として口渇や便秘などがあります。
③溢流性尿失禁
膀胱に尿が多量にたまっている状態を放置しておけば、尿路感染症や腎機能障害をきたすリスクもあるため、カテーテルを挿入して残尿を除きます。カテーテルは持続的に留置する方法と、1日数回定期的にカテーテルを挿入して尿を排出させる間欠的導尿法があります。その後、原因となっている病気の治療を行います。例えば前立腺肥大症であれば、投薬をおこなったり、前立腺を削る手術を行うなどです。
④機能性尿失禁
運動機能に問題がある場合はリハビリで機能回復訓練をおこなったり、トイレ動作の介助方法の工夫、手すりをつけるなど住環境を整備したり、様々な手段があります。認知力の低下がある場合は、トイレに行きたいサインを見つけて、トイレに誘う排泄誘導をおこなったり、トイレの場所をわかりやすいように便所と表記したり、脱ぎやすい服に変えたりします。