尿検査でわかること
【肉眼による尿の性状】
●色調
健康な人の尿は薄い黄色をしていますが、大量に飲水をした場合や、尿崩症などでは無色に近い多量の尿が見られます。また、激しい運動など多量の発汗による脱水時や黄疸で尿中にビリルビンが多量に排出された場合、黄褐色~茶褐色の尿がみられます。
●混濁尿
尿路感染症で尿中に白血球が混じると尿が白く濁ります。また、尿を長時間放置した場合や尿路結石、神経因性膀胱の際に尿中に塩類が結晶化して白く見えることもあります。
●血尿
尿に血液が一定量以上混じると尿が赤色を呈します。
●着色尿
ビタミンB2製剤を服用した際、尿が濃い黄色に変色することがしばしばあります。また、その他、ある種の薬剤により尿が着色することもあります。
【尿試験紙検査】
①尿潜血
尿の中に血液が混じっている状態です。腎臓、尿管、膀胱、尿道のいずれかで出血していることを示します。
②尿蛋白
血液からろ過された蛋白質が、再吸収されずに尿に排出されたもので、病的な蛋白尿以外に、生理的な影響で一時的にに蛋白尿が見られる場合があります。
③尿糖
血液中のブドウ糖が尿中に漏れ出てきたものです。糖尿病で血糖が過剰の場合、糖が再吸収しきれず尿中に排出されます。
④尿ウロビリノーゲン
ウロビリノーゲンとは、古くなった赤血球が肝臓で分解されてできるビリルビンが胆汁となり、腸に排泄され、そこで腸内細菌によって分解されたものです。多くは便に混じって排泄されますが、一部は腸から再吸収され、尿中に排泄されます。そのため、健康な人でも微量のウロビリノーゲンが検出されます。
⑤尿PH
尿PHとは尿が酸性かアルカリ性を調べる検査です。5.0~8.0の間を変動します。食事や運動の影響を受けやすく、牛肉や豚肉など、動物性食品を摂取すると酸性に、海藻類や緑黄色野菜など植物性食品を摂取するとアルカリ性に傾きやすくなります。また、激しい運動をすると体内に乳酸が蓄積し、尿は酸性に傾きます。
⑥尿比重
尿比重は、尿の中の水分と、水分以外の物質の割合を指します。 尿には余分な水分のほかに、体内の老廃物が含まれています。そのため、尿の比重は水よりもやや高く、健常者では、水分摂取の量や発汗量などによって1.010~1.030の範囲で変動しています。
【尿沈渣】
①赤血球
尿路から出血をきたす場合にみられます。尿沈渣での赤血球の形状を観察し、変形していたり、大小不均一であれば腎炎など腎臓の疾患を疑いますが、形態、大きさが均一であれば、尿路結石やがん、膀胱炎など尿路疾患の可能性があります。
②白血球
顕微鏡で1視野に白血球が5個以上認めれば膿尿と判定されます。腎盂腎炎、膀胱炎、尿道炎など尿路感染症の場合に見られます。
③尿路上皮(移行上皮)
自然尿でもごく少数は認められますが、細胞に形態異常(異型細胞)が認められれば、膀胱がんなど尿路の悪性腫瘍を疑います。
④円柱
円柱は尿細管から分泌される蛋白や血漿蛋白が尿中に排出されたもので、健康な人でもごく少量認められることがありますが、種類によっては、腎炎やネフローゼ症候群などが疑われる場合もあります。
⑤結晶
慢性的な尿路感染症でみられるリン酸アンモニウムマグネシウム結晶、尿路結石症と関連のある尿酸結晶やシュウ酸カルシウム結晶、また、特殊な例としてシスチン尿症でみられるシスチン結晶などがあります。
⑥細菌
尿沈渣ではしばしば細菌を認めることがあります。白血球が同時に検出された場合、注意が必要です。細菌の種類を同定する培養検査をおこないます。培養の検査には数日を要するため、通常最も多い細菌を想定して抗生物質による治療を開始し、効果が不十分な場合には細菌の結果をみて、効き目のある抗生物質に変更します。